経済建設委員会の行政視察の報告です。
最初の視察地は大阪府泉佐野市。
泉佐野市といえば、「ふるさと納税」。
飯能市も寄付を多くいただいている自治体ですが、度重なる制度変更に翻弄され、まだまだ可能性があると感じながらも手探り状態が続いています。
また、ムーミン基金がそのほとんどを占める中、ムーミン基金条例の在り方について、これまで何度も議会や委員会で質疑質問をしてきましたが、市長が変わっても依然課題は先送り状態。
経済建設委員会として、所管事務調査のテーマでもあり、参加委員全員が本気で学ぶ意気込みでうかがいましたが、受け入れてくださった泉佐野市のご担当者さまは、我々の熱量を遥かに上回るアツさ。
なんと驚異のスライド資料320枚!
「まず最初に1時間ご説明して、それから事前にいただいたご質問にお答えして、その後質疑応答となります」とのご発言も、とても1時間で終わらない濃い資料内容。
ふるさと納税への思いがアツく溢れ出ており、希望も絶望も悔しい思いも怒りも忸怩たる思いも理不尽さも、描く未来への確固たる信念と情熱が伝わり、真剣勝負で学ばせていただきました。
途中、時間オーバーについて異議を唱える委員もおられましたが、ここは委員長の時間配分のミスとしてひたすらお詫び、続行をお願いして、最終最後まで徹底してお話をうかがい、質疑応答でも聞きたいことを全部うかがいました。
その信念やポリシー、ふるさと納税という制度へのゆるぎない情熱と使命感から、これまで経験したことのない貴重な視察となりました。
以下、報告です。
視察地(1) 大阪府泉佐野市
視察日時 令和5年10月17日(火)
視察事項 ①「ふるさと納税」について
②「シェアサイクルPiPPA」について
市の概要
泉佐野市は、大阪市と和歌山市のほぼ中間に位置し、背後に一部が金剛生駒紀泉国定公園に指定された和泉山脈を擁し、美しい山河、緑あふれる自然環、商・工・農・漁業がバランスよく栄え、関西国際空港の開港などに伴う人口の増加により、商業・サービス業も盛んとなっている。
視察概要
①ふるさと納税について
泉佐野市では、総務省がふるさと納税制度を創設した平成20年度から、財政再建化を進める過程でふるさと納税に取り組み、平成29年度に1,000種類を超える返礼品と、発想力で寄附納入額が135億円となり、全国1位となった。市内小中学校のプール設備、校舎の耐震化、教育・子育て支援の拡充等に活用した。
②シェアサイクル「PiPPA」について
泉佐野市では、市内にシェアサイクル「PiPPA(ピッパ)」を設置している。PiPPA専用アプリに登録すれば、いつでも簡単に自転車が借りられるシェアサイクルサービスである。専用駐輪ポートならどこでも貸出・返却が可能である。駐輪ポートは駅近なので、ちょっと自転車を使いたい、目的地へスムーズに行きたい人には大変おすすめである。
また、日常生活と違って旅行で自転車を使うと乗り始める場所と返却したい場所が必ずしも同じ場所とは限らず、違う場所に返却したいケースも多く発生するが、PiPPAを使えば、それが可能となっているので自由度のさらに高い旅行が実現できる。利用料金は30分ごと110円(税込)で、月額利用、デイパス利用もある。
視察結果
①ふるさと納税について
ふるさと納税の税金控除額の上限は約2割であり、全国の住民税は約13兆円、ふるさと納税の市場規模は約2兆6千億円と考えられ、まだまだ開拓の余地がある。ふるさと納税は、首都圏一極集中による税収格差が問題となり、つくられた制度だが、地方に財政的余裕のある自治体はほぼ存在しない。
泉佐野市では、制度の趣旨からも、一次産業が旺盛で地場産品資源の豊富な一部の自治体だけでなく、全国の自治体が平等にふるさと納税の恩恵を受けられることが理想であるという信念に基づいた取り組みで実績をあげてきた。
現在、取り組んでいる「#ふるさと納税3.0」の泉佐野バージョンは、返礼品目的の寄附が圧倒的多数だが、GCF(ガバメントクラウドファンディング)の認知も広がっている現状の次なる在り方として、返礼品の魅力はそのままに、「自治体を応援する、企業を応援する」という要素を加え、寄附者と地方のつながりを強くするための手法で、商品開発や販路拡大のため、製造・加工・開発といった設備投資費用のイニシャルコストを100%補助金交付し、助金は自社商品を返礼品にふるさと納税型クラウドファンディングで寄附を募り、入った寄附金が原資となる制度である。
なお、上記の補助金については、新たな特産品を創る市内事業者を支援、新たにふるさと納税に参加する市外事業者の企業誘致のための泉佐野市地場産品創出支援事業補助金と、市内事業者のふるさと納税参入に伴う設備投資等の支援、既存のふるさと納税事業者の事業拡大や設備投資等の支援のための泉佐野市中小企業者支援事業補助金である。
これら取り組みへの補助金の原資をクラウドファンディング型のふるさと納税で調達し、寄附で全ての経費を賄うので実質財源の持ち出しはない。この「#ふるさと納税3.0」の取り組みは、産業や雇用が生まれ、ふるさと納税も増加し、実質財源の持ち出しがないため、どの自治体でも実施が可能である。
泉佐野市では、地場産品規制に苦しむ全国の自治体にノウハウを積極的に提供している。それぞれの自治体の規模や課題に合わせた新たなバージョンや、カスタマイズされた「#ふるさと納税3.0」の創出により、規制と共存共栄しながら、ふるさと納税市場が拡大され、税外収入の確保につながると考えられる。
有難いことに飯能市は寄附を多くいただいている自治体であるが、市場規模の拡大に貢献し、更なる事例を創出すべく、導入の検討を提案してまいりたい。
②シェアサイクル「PiPPA」について
シェアサイクル導入のきっかけは、大阪モデルスマートシティ実現のため、大阪府と府内43市町村、企業で「大阪スマートシティパートナーズフォーラム」が設立され、行政の課題をICTの活用により解決する取り組みの一環としてスタートしたものである。
泉佐野市とNECで「持続可能な新しい観光地域づくりに関する連携協定」を締結し、観光サービス工場と地域経済活性化に向けて、シェアサイクルを活用した新しい観光サービスの提供、データ活用による観光活性化施策の検証を行うため導入された。
令和3年度は関係者による実証実験、令和4年度に一般観光客による実証実験を経て、令和5年度より本格運用を開始した。観光協会が管理運営し、事務局には市の職員という体制である。2次交通の不足解消や観光周遊の移動手段として、アプリの活用によるデータ活用等工夫しながら、いかに周知し認知度を上げ、利用を促進するかが課題であるとのことであった。
市長自らが全ポートを走ってPRしたり、デジタルスタンプラリーや初回利用料OFFキャンペーンなどを実施したが、利用時間帯や頻度、駐輪ポートの偏りなどの課題もある。
地域振興・まちの賑わい創出等の基金を活用、一般財源からの持ち出しなく自走できることを目標としているが、目標クリアはまだ遠い状況であるとのことであった。
飯能市においては、地形や道路の状況などから企業参入の障壁は高く、採算性を含め、シェアサイクル導入の課題は多いが、公共交通の不足や観光客の周遊、日常の移動手段等の解決策の一つとして、検討すべき手法であると考える。