議員や選挙の世界はセクハラの常識をアップデートできるのか

女性キャリアが専門の友人のサイトで考えたこと

久しぶりに友人の川崎貴子女史が運営するサイトのコラムを読んでみました。

https://majo-terrace.online/

人気コラムに「何で?というような性加害を30代以上がなぜやってしまうのか」というテーマに対し、
この10年ほどで、目まぐるしく常識はアップデートされ、被害にあっていた人が声をあげやすくなって、「え、これが性加害?だとしたら、自分が受けてきた仕打ちは何だったの?」 とかつてそれらを受けてきた世代がおののいている現状が分析されていました。

セクハラなんてあって当たり前、訴えるものではなく、耐えて自衛して生き延びるものだった時代の被害者たちは、自分がいつまでも被害者でいられるわけはなく、自分たちが受けてきた常識をアップデートして、今はもはや、老害、加害者の予備軍であることを自覚せねばというような内容。

それでふと思い出したことがあって、書いてみようと思います。

女性議員は言い寄られやすいのか

今回の選挙で、友人が手伝ってくれたときの会話。

ママ友の「女性議員さんって、みんなに愛想よくニコニコしないとだから、男性から言い寄られたりとか大変じゃないの?」という質問に、女性現職で答えたほんとに何気ない会話でした。

私も含め

「まぁ、もう年齢的にそんなにない」
「結婚してるし子どももいるってみんな知ってるからそうでもない」
「でも、独身で若い女性候補は大変だよね」

と、新人の若手で女性でかわいかったりすると、ボランティアの男性が面白いほど集まって、どうしても若手の女性候補はイメージカラーがピンクって人が多くて、ピンクのおじさん集団がガッツポーズしてる集合写真はあるあるだよね、など

ライトな笑い話にしてしまったんだけど、そんなになくて、そうでもないだけで、政治や議員の世界は、ほぼアップデートされてないのが現実かも知れないかもと。

事例で出せるのが私の経験だけで恐縮でございますが、笑い話にできるところで

川口で選挙やってて、駅でひたすらビラ配りして、20時(選挙は8時~20時)で終えて、そのまま電車に乗って帰ろうと一人で歩き始めた瞬間

ガシッと二の腕を掴まれ、壁の方に引っ張って行かれ

「君。俺のこと誘ってたよね?どっか行く?」

手には、間違いなく私が渡したと思われる選挙ビラが握りしめられている。

これが飯能駅なら「やめてください!誰か助けてーキャー!」なんだけど、川口でしょ?

「はぁぁぁぁぁ?あ?

これは選挙!選挙はニコニコするのが仕事なの!選挙でなければアナタにニコニコなんてする理由はないの!選挙!そして八時で終わったの!選挙が終わったら、腕掴むのはチカンですよー!チカンアカンよーーー!チカンアカンー!!」

って、大声で川口駅で悪態ついて、成人男性が逃げていったネタなんかは、よく笑いをとるんですけど、リアルな話、ほんとに私が最初に駅に立ち始めた初出馬の8年前は、女性がタスキして駅に一人で立ってるなんてなかった光景で

絡まれたり、後をつけられたり、怖い思いをたくさんしたのは事実です。

この10年で女性議員は増えたけれど

この10年ほどで確かに女性議員は急激に増えました。
各政党の支援体制も変わってきたし、常識がアップデートされてきた部分はあります。
それにしても、もともとが特殊すぎるというか、アップデート以前の問題が大きいというか。

私の実体験ですが、政党の組織などで意見すると、

「めんどくさい」「うるさい」…から情報は共有するな、知らせるな、と「めんどくさい年増女は更年期」で片づけられることが普通にあります。

セクハラを受けた、パワハラを受けた、と訴えると、消えていく女性議員は数知れずですが、それに対して

「もっと若くて綺麗どころ行くわ!」
「自意識過剰か!」

等々、普通に会話されています。

私も政治の世界に入った時点で40超えてて、すでに50に乗りましたので、言葉狩りはさておいて、40過ぎた女性も、50過ぎた女性でも、

60代70代80代男性には「自分も若くないし、若すぎず適当によいオンナ」として扱う人は相当数います。

婚活業界では、50代男性が、子どもの産める20代から32歳くらいまでとか、60代男性があんまり若い子は話が合わないと35歳から45、6歳までとか設定されてる話はよく聞きますが

政治とか選挙の世界では、ぐっと平均年齢が上がって、50過ぎた私でも「若すぎず手頃なオンナ」として扱われる場面なんて腐るほどあるわけです。

「もっと若いとこ行くわ!」
「誰が(そんな年増)行くか!」
「自意識過剰!」

はセクハラを訴えた女性議員に向ける決まり文句であり、じゃぁ絶対行かないかというと、その昔、トレンディドラマで鈴木保奈美さんが

「カーンチ、セックスしよう」

いう場面がありましたが、20代の鈴木保奈美さんでなくても、政治の世界という権力欲を筆頭に「欲の塊」まさに「貪欲」、超・欲のあるオジサンで構成された特殊な世界ですから、

「例えばこれ言われたら若くなくても行くんでしょ?」に異論を受けたことはありません。

選挙は誰も守ってくれない、敵か味方かもわからない

選挙は全て自己責任で、誰も守ってくれませんし、敵か味方かすらもわからない世界です。
自分の選挙だけでなく、選挙の応援も大きな要素。

政党に限らず、政治的判断で、首長選で誰を応援するかなどは、議員活動に大きな影響があるのですが、4年前、私は現職ではなく新人を応援すると決めて宣言しました。

そしたら、先方の選対から、あちこち応援依頼が来て、エリアを振り分けられて、行くとそのエリアの偉いさん…の子分みたいな御仁方(70代80代)が運転する車に乗せられて挨拶まわりに同行するその道中、延々かつての不倫の武勇伝を聞くとか、何やら昭和の日活映画のTHE濡れ場みたいなシーンの音声がずっと車中に流れてるとか

普通ってか、民間では一瞬にして通報案件であっても

動じず顔色一つ変えず、議員らしい相づちで、有権者の前ではにこにこ最高に感じよく選挙のお願いに回る。

敵陣営に女性国会議員が応援演説に入ると聞けば、「マドンナ対決だ!」と呼び出されて、

「国会議員の先生と(無名の坂井)じゃあ話になんねーよ」
「まだ歳が10ほど若いからいいか」
「こっちも器量じゃ負けねーからな」

みたいな会話で、和気あいあいと盛り上がる。

これは、飯能が田舎なんじゃなくて、投票率が低い都市部も投票してる人たちは往々にしてこんな感じです。

それで、そこまでして頑張って応援しても、次は私を応援してくれるかというと、二世でも地の人間でもない私を応援するのは土台無理な話で、しばらくすると

「あいつは誰それの女だ」

なんてことを平気で言われたりします。

まだまだこういう人たちが中心の世界が選挙です。

有権者にアップデートせよは難しい

有権者もまた、政治が絡むと不思議なことに、これは先の選挙での実話ですが、私の後援会長は御年90歳。お達者です。

そこに最近お知り合いになって、応援してくれる御年85歳の御仁がいらして、何かと思えば

「まだ若いからわからないかも知れないが、あいつ(後援会長90歳)と動いていると、男性の票は入らない。そういう世界だ。
その点、俺は母ちゃんもとっくに死んでるし、俺といれば世間の見る目が変わる。票が増える。俺が当選させてやる」

と、言われる。

…キツイですよね。

と、こういう話は今まで一切したことなかったんですが、世界がアップデートされているなら、やっぱり自分自身もアップデートして、こういうことが次世代に続かないようにしていかないとな、と思ったのが、冒頭のコラムを読んでの思いでした。

有権者に常識をアップデートせよというのは、まず不可能に近いし、政治の世界そのものが常識をアップデートしていると到底言えない現実にあって、私は不用意に「政治の世界に入らない?議員やってみない?選挙出ない?」とは言えないのが、本当の本音です。

それでも世界はアップデートされて少しずつよくなっている

選挙は終わった後の方がキツくて、今回の選挙で私は、選挙ビラ(政策が書いてあり、候補者本人が演説している場でのみ配れる)を1000枚手配りするというミッションに挑みました。

選挙期間1週間。

結果は残22枚。惜しい!

でも、この人口の少ない飯能で、平均1日143枚、初日と最終日の土日は200枚、平日も100枚を受け取ってもらうミッションを、私とボランティアさん2人ほどでなんとかクリアし、

受け取ってくれた人の半数以上、もしかすると7割近くは握手をしてもらえて
準備期間を入れたら、選挙モードで握手をしてもらえた人は、少なく見積もって700人は下回らないと推計されるのですが

選挙後、複数人の男性が訪ねてこられて

「あなたは私の手を握ってくれたでしょ」
「自分の手を取って顔もかわいかったので」
「手なんかつないでよぅ。あんたとは話も合うんだよ」

等々、お誘いをお受けしたりするわけで
それは握手だし、選挙だし、選挙と握手ってわりとセットだし
演説じゃない話は、すみません、合わせてるし、次々多くの人と話したので、深い話はしていません。
推察するに60代70代80代…もしかすると90代?

それで私は当選していて落選経験がないからまだ笑って対応していますが、選挙に絶対はないし、落選するとほんとにずっと言われる。特に家族が。

さらに、セクハラ系以外はもっとネタに事欠かないくらい、落選運動や誹謗中傷が日常茶飯事ですからね。

人格否定も甚だしいのが政治や選挙の現実です。

とても不用意に「女性議員増やしましょー」と、私は言えないですが

それでも、政治や議員の世界が少しずつでもアップデートされてよくなっていくように、女性が普通に挑戦して嫌な思いすることが減るように、

自分自身もアップデートしていきたいと思ってます。