令和3年3月議会。
所管の総務教育委員会での、坂井の質疑内容と答弁概要、討論全文をご報告いたします。
任期4年間、ずっと総務委員会(所管替えがあり現在は総務教育委員会)に所属し
財政を中心に質疑をしてきました。
令和3年度の当初予算は、これまで指摘を申し上げてきた懸念が顕在化し
新型コロナウィルス感染症の影響を直撃で受けてしまう内容となりました。
飯能市の財政は危機的状況にあります。
早急な対応が必要であると、指摘と提案を致しました。
***
【議案第1号 専決処分の承認を求めることについて
(令和2年度飯能市一般会計補正予算(第10号)案】
14款予備費1項予備費1目予備費
【質疑】
予備費について、具体的な想定は。
【答弁概要】
10号補正予算を編成するにあたり、予備費はすでに1,000万円を切る状態。
3号補正予算の際に2,000万円の増額をしたが、新型コロナウイルス対策のアルコール消毒液の購入や、がんばる商店街等応援補助金の不足分、修学旅行のキャンセル料等の支出により、残額が少なくなった。
今後の不測の事態に対応するため、2,000万円を増額するもの。
【議案第17号 令和3年度飯能市一般会計予算(案)】
1款市税
【質疑】
市税について、前年度より4億ほど減となっている。以前質問でコロナに伴う影響はないとのことだったが、このように税収が減っていることは今後の市財政に大きな影響を与え続けると考えるが。
【答弁概要】
新型コロナウイルス感染拡大に伴う市税への影響について、今年度は、企業収益の悪化による法人市民税の減少、感染リスク・重症化リスクが増大することに起因する喫煙者の減少による市たばこ税の減少、外出を控える
ことに起因するガソリン消費量の減少による地方揮発油譲与税の減少など、大幅な減収が見込まれている。
令和3年度においても、感染拡大による社会経済活動への影響が長期化することにより、法人市民税に加え、給与所得の減少による個人市民税の減少が見込まれるほか、喫煙者の減少によるたばこ税の減収などをあわせ、市税の減収が見込まれることから、前年度当初予算比約4億円減の118億8,238万円を計上。
【質疑】
前年度より約4億円の減額ということだが、見通しはもっと厳しい状況であり、更なる減収になるのではないか。
【答弁概要】
国が示す地方税収の見込みなどを参考にし、新型コロナウイルス感染拡大による影響等についても十分に勘案の上で積算した金額であると考える。
19款繰入金
【質疑】
基金繰入が昨年度より多少減ったものの10億円となっている。緊急時に使うこと自体は問題ないものの、積み立ての不足により取り崩しが続いている。財政調整基金も前年度と似た規模で取り崩すことになり、全く積み立てか完了しないと考えるが。
【答弁概要】
財政調整基金については当初予算の編成に当たって年度間の財政状況の調整に使わせていただく基金であり、収支のバランスを見て繰入れをしている状況。令和2年度末の見込みでは約8億5,000万円、令和3年度末では約5億円の残高となる見込み。決算の状況を見て、積増しもできるのではないかと考えており、財政バランスを見ながら検討していきたい。
特定目的基金については、その目的に応じて、事業を実施した際には取崩しを行い、充当している状況。
22款市債
【質疑】
市債の計上が前々年度から連続して増えており、令和3年度においては約35億円と、ついに予算の1割を超えてしまった。土地開発公社の件もあっての増ではあるが、土地開発公社の解散は既に制度上見えていたことであり、計画的に購入していればこのような巨額計上はなかったと考えるが。
【答弁概要】
10年間で土地開発公社が民間への売却をしっかり進めていくという計画だったが、うまく進まなかったという状況。解散に向けた計画は、令和3年度までに所有財産を全て処分し、令和4年度に解散することとなっており、これまでこの計画に基づいて事業を進めてきたので、最終年度を迎えるに当たり、一括して所有財産を処分できるようにしたいと考えている。
【質疑】
売却がうまく進まなかった大きな要因は何で、見直すタイミングがなかったのか。
【答弁概要】
土地開発公社の理事会等でも議論がされてきたが、簿価と時価の差額の問題は、とても大きなものではないかと考える。民間に売却をしても基本的には赤字が発生してしまう状況で、その部分は市が補填しなければならないということも大きな負担になる可能性があった。公社として出来る限り売却を進めてきたが、結果としてこのような状況になった。
【質疑】
臨時財政対策債が前年度の倍近い20億円となった。後年交付税措置ということだからと、他の自治体では減収があっても5割増程度で、そこまで増えていない。倍増は歳入欠陥に近く問題ではないか。
【答弁概要】
ここ最近の例で倍増はない。ただ、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、地方税収は大幅な減額となる見込み。地方交付税だけでは賄いきれない部分については臨時財政対策債をもって補い、地方交付税と臨時財政対策債を一体的に考えて財源不足に備えるという考え方。国は、臨時財政対策債を74.5%の増額として見込んでおり、これを受け20億円を計上したもの。
歳出
1款1項1目議会費
【質疑】
9議会、危機管理秘書会計監査
議会費。既に本会議では議事録作成や動画配信の仕組みがある。行政側には公開の対象となる審議会等の会議録ということで、会議室での議事録作成ノウハウもある。各委員会や全員協議会についても本会議同様に配信と議事録作成は可能と考えるが。
【答弁概要】
各委員会や全員協議会の会議録は、市ホームページなどには掲載していないが、情報公開制度があり、会議録の閲覧等は情報公開制度で対応していきたい。
9款1項3目防災費
【質疑】
防災対策事業10節印刷製本費の具体的な内容は。
【答弁概要】
地震ハザードマップと水害リスク情報図の作成費用。
【質疑】
各々の作成部数と、水害リスク情報図はどういったものか。
【答弁概要】
地震ハザードマップは、平成26年度に作成を行い、全戸配布、窓口での継続配布をしているが、作成から数年が経過し残部が少なくなったこと、また、昨年12月に災害種別ごとに使用する避難所を区分したことによる情報面の更新を行い、4万部作成するもの。
水害リスク情報図は、今回、新たに作成するもので、経緯は、平成27年の水防法改正により、国・県において、その管理する河川に洪水浸水想定区域を指定し、洪水ハザードマップを作成し公表することになっている。本市には、洪水浸水想定区域はないが、埼玉県において、県管理河川で洪水浸水想定区域ではカバーしない河川の区間を対象に、同様のものを県独自に新たに作成したデータに基づき、作成を行うもので、印刷部数は4万部。
2款1項9目企画費
【質疑】
市の総合計画と行革について、今回のコロナウイルスに伴う影響は、以前のリーマンショックの時を踏まえれば、先行して歳出の抑制、事業の繰り延べなど対策を考えて実行するべきだった。市の事業継続に課題が生じないよう対策を考えておくべきだったと考えるが。
【答弁概要】
必要な事業を継続していくため、特定財源の確保、市全体の事業の見直しなどに取り組んでいる。
実施計画のヒアリングでは、更なる経常経費の削減を方針として示したほか、事業の優先順位や経済状況等を確認し、実施計画を策定。
【質疑】
ヒアリングでの経済状況の把握について、どのように行ったのか。
【答弁概要】
実施計画のヒアリングは、担当課から商店街における景況感や店主の声、商店街等の状況などを聞き取りした。前年度を踏襲した査定ではなく、現況や課題を把握した査定を行っている。
2款4項5目市議会議員選挙費
【質疑】
選挙費、市議会議員選挙の公費負担が計上されている。
公費負担対象の契約について見積もり合わせや価格交渉を推奨し、選挙用自動車やポスターなどに公費負担対象外の内容を含まないよう精査するよう、公費負担限度額に達しないよう各候補者に通知する自治体もある。今回の市議選において、市民の税金をあまり使わずに済ませ、コロナ対策へ流用できるよう、各候補予定者にそうした文書を配布してはどうか。
【答弁概要】
候補者説明会の中でしっかりと制度の説明をさせていただく。
【質疑】
候補者によって、公費負担の請求額に差がある状況。負担額の軽減に自治体から意識啓発していただきたい。
【答弁概要】
繰り返しとなるが、候補者説明会においてしっかりと制度の説明をさせていただく。
2款1項1目元金
【質疑】
公債費、今回一気に2億ほど増えている。利払いを含めた返済額が予算の一割に達する状況になり、今後も公債費が減ることはなく財政の硬直化が進むと考えるが。
【答弁概要】
地方債の年度末現在高の見込みに関する調書において、令和3年度末の地方債残高は315億円、このうち償還額は28億円を見込んでいる。
それぞれ約半分は臨時財政対策債に係る部分。臨時財政対策債につきましては、財政健全化の数値を悪化させるものではないと考えている。
【質疑】
財政上、起債額の増加、税収の減少等、歳入の課題が顕在化しており、コロナ禍において税収が回復
する見込みもなく、危機的な状況と言える。財政規模の大小に関係なく、政令市の大阪府堺市では財政危機宣言を行っている。危機状況を市民へ発信して、理解を得る必要はないか。
【答弁概要】
令和3年度当初予算規模は301億円を計上し、前年度比1%増。そのうち11億7,000万円は土地開発公社の所有用地取得が臨時的に入っている。
差し引くと前年度よりも予算規模を圧縮させている。税収の減少や施設の老朽化など、数多くの課題がある中で対応している。
10款1項2目事務局費
【質疑】
ブレア市親善訪問事業について、新型コロナウイルス感染症の影響で来年度も実施できなかった場合、オンライン交流など代替事業を行う予定はあるか。
【答弁概要】
現時点では訪問を実施する予定だが、仮に実現できなかった場合はそのような対応も検討する。
10款1項4目教育センター費
【質疑】
国際理解教育事業の手数料の内容は。
【答弁概要】
各学校に派遣しているAETの派遣手数料。民間業者に委託している関係で手数料という形で計上。
10款5項3目図書館費
【質疑】
図書館運営に関して、消毒や滞在時間の制限などコロナ対策をしているが、今後の運営については、本を読んだり、滞在したり、勉強したりできるようには考えているか。
【答弁概要】
今年度はコロナ対策として、座席数を間引いて減らし、滞在時間を制限した。緊急事態宣言が出てからは、滞在時間を1時間に制限。今は、図書館で本を選んで自宅で読むことを推奨。
今後は感染状況を見て、十分な感染防止対策を行い、図書館で本を読めるように、学習の場を提供できるようにと考えている。
討論全文
一般会計予算について、反対の立場から討論させていただきます。
今回の予算は、市税が4億減少し、予算総額が増となったため、歳入における構成比が一気に落ち、前々年度43%、昨年度41.2%、今回39.5%と減少し、ついに四割を切ってしまいました。過去の討論でも歳入の安定性を考慮すると、改善が必要とご指摘申し上げてまいりましたが、懸念した通りの財政悪化が進んでいます。
自主財源比率も前々年度55.4%、前年度52.7%、今回49.8%へ減り、こちらも平成29年度以来の4割台になってしまいました。依存財源である市債の歳入構成比も増え、ここ数年で借入額が増え続けており、償還額も増え続けます。今後の税収減の影響も考えれば、現在高は圧縮していかねばならないところ、特別会計を含めても減少したとは言えない状況が続いており、財政の余力はありません。
基金は10億以上の繰り入れで基金総額は48.6億円となり、財政調整基金については約3割減となる8.5億円と大幅減となりました。以前より、財政規模拡大、歳出優先の構造は問題と指摘を続けてまいりましたが、財政の安定なきままにきてしまった結果として、起債と基金取り崩しでしか歳入不足を補えません。
今回、市が公表したシンボルプロジェクトには、ゼロ予算事業が多く見られます。これ自体は、まさに全庁的な業務の見直しと民間活用、事業コストの削減、行政サービスの質の向上と、市職員のみなさまのご努力そのものですが、予算面で考えますと、これらの事業を削っていくとプロジェクト総数は大きく減少します。
市側から見直しの詳細が明らかになっていない以上、ここまで市財政を悪化させ、新型コロナウイルス感染症の影響をこれほど直撃で受けてしまった今回の予算、持続可能な行政経営、マイナスシーリングなど明確な財政効果を出すような方針は、なかったと判断せざるを得ません。
昨年も予算の討論で述べましたが、財政逼迫の危機を市内で共有するために、財政の非常事態宣言を行う事例を参考に、対策をとるべきであったと考えます。
近隣の東京都日野市は財政非常事態宣言を出していますが、飯能市より財政指標は良かったのであり、
大阪府堺市では、予算の公表を前に、市長自らが財政危機宣言を行い、これまで積極的に出してこなかったマイナスの指標も公開して、今いかに危機的状況にあるかを市民の皆さまにお示しをし、理解と協力を求めています。各部署には予算10%の削減案提出を通達するなど、このままでは基金が底を尽き予算が組めなくなるとして、今必要な対策を打ち出しています。
飯能市も市政運営において、発展都市という希望も必要ではありますが、財政については、今危機が顕在化していることを市民にお示しし、危機を共有することでできる改善や改革があり、すぐに必要な対策を進めるべきです。
昨年度同様、歳出の見直しが大きく取り上げられていない本予算については、反対の立場から見解を申し上げ、討論とさせていただきます。