~議案の判断について~
市議会傍聴のご案内をすると、一般質問には毎回多くの皆さまが傍聴にお越しくださり、大変感謝をしております。
一般質問ともう一つ、ぜひ傍聴、または、市民の皆さまの目で厳しくチェックしていただきたいのが、「議案に対する判断とその論点」です。
市政報告会などでは、上程された議案についての解説と共に、採決については特に詳しくお話しています。
賛成・反対は●×で示されますが、ここでチェックしていただきたいのが、その論点です。
議案の賛成・反対については、同じ反対でも論点が全く異なる場合もあります。
また、賛成は本当に市民の皆様と市の発展のための賛成であると納得できるか、みなさまのチェックが必要なのです。
最小の税支出で、最大の効果を得る。サービスの改善等で税支出を減らした分は、他のサービスに充当できるので、市政運営にもメリットがあり、市民もサービス増。ここに考慮や言及がなければ、状況は改善せず、長期的なサービス継続が困難になります。
こうした考えから、常に議会に出てくる議案や予算に提案を示しています。
少し遡りますが、平成30年12月議会と平成31年3月議会における、坂井が反対の立場で討論した議案について、反対の論点概要と、それに対する賛成の立場の討論概要についてご紹介します。
【平成31年3月議会より】
●議案第21号「平成30年度飯能市訪問看護ステーション特別会計補正予算(第2号)」
今回、診療報酬、介護報酬と介護支援収入が減り、それを一般会計で補填ということで、歳入歳出の構造的課題がさらに悪化。総務管理費については補填の結果として繰入金が増、支出も総務費ばかりです。収入が一貫して減っており、事業のあり方として訪問看護関連事業を行うことよりもステーションを設置し続けることが目的ともなりかねない収支構造であり、飯能市全域の市民の皆さんの税金による運営としては適切とは言い切れない収支構造であると考えます。
【賛成側の見解概要】
民間事業が参入しづらい山間地、民間ではでき得ない立地である、との見解。
「労働環境に配慮せず、訪問看護の必要性やサービスを否定。売り上げが減ったから人件費を削れと言っている」等、およそ指摘の内容を理解されていません。
訪問看護ステーション単体での運営が難しいのは様々な調査から明らかで、民間で自立しているところ(自治体からの低額な支援ありも含む)は、介護サービスなどと一体経営とし、総体で経営基盤を確保しています。
参入がしづらいのではなく、市がステーションを持っていて、参入ができないという側面もあります。民間ができないと決めつけるのも、山間地で複合サービスを行っている事業者に失礼です。
人件費は、時給換算で単価を下げるのではなく、存続できるよう体制を見直す必要性を指摘しています。これは民間に譲渡といった、運営主体も含めて見直すべきものであり、経営のあり方として当然必要です。
「持続可能な環境を維持しながらサービスを提供し続けるべきだ。戦略的な仕組みの構築や充実した労働環境の整備に予算措置を講じる必要もある」とありますが、具体策は何も出ていません。
戦略的な仕組みの構築とは何か、一切言及なく、予算増で今後も財政負担増を防ぎ、持続可能な環境となるのでしょうか。
銚子市では、市立病院の負担が積み重なり、財政健全化団体になりかねないと、対策が急務とされています。飯能市の事業運営も同様です。現状追認では未来はありません。
●議案第40号「平成31年度飯能市訪問看護ステーション特別会計予算」
訪問看護歳入歳出予算、訪問看護収入は前年比2割減の一方、繰入金は13%の増、歳入の構成費バランスが前年度と比較し、さらに崩れ、サービスの提供手法としては持続可能な構造ではなく、適切とは言えない状況と考えます。人件費の削減は限界があります。市が運営するのでは、一般財源で補填をせざるを得ないままです。
平成29年の決算では、平日営業が247日、訪問看護やリハビリ、ケアプラン作成等が合計で3,000件、1日の稼働は12件、1件当たりの支出が2万円と高額となり、今回の予算も同様の経費構造です。在籍する熟練の優秀なスタッフの方にいかに稼働いただくか、これは運営の問題です。
他自治体では民間に委ね、訪問等1回につき一定経費を支払い、サービス空白域解消と民間参入を進めています。仮に1件1万円とほかの自治体より高額の支援をしたとしても、3,000件ならば3,000万円、今の予算のほぼ半額となります。
さらに訪問看護ステーション単独の運営というのは現在減ってきており、日本看護協会が推進する民間の看護小規模多機能型居宅介護、いわゆる看多機への移行や併設が進んでいます。通所、宿泊、訪問、看護と介護、この4つのサービスを一体的に提供するもので、安定した包括報酬での収入の大きさに比し、人件費がそこまで膨らまないという利点がある上、今の平日のみから24時間、365日のサービスにも大きく転換ができます。もしくは現在の本特別会計の予算を同じく一部充当し、24時間対応で訪問介護と訪問看護の両方を提供し、定期巡回、随時対応を行う定期巡回・随時対応型訪問介護看護を民間に担ってもらうということも可能であると考えます。
以上のことから、現状の訪問看護拠点設置による運営は持続可能な事業とは言えないと考えます。
【賛成側の見解概要】
「訪問看護というサービスは利益を確保するための事業ではない」という指摘。
これは、株式会社、社会福祉法人、医療法人、様々な法人が利益を上げて運営していることや、医療制度を根本から否定するものです。利益を確保しなければ、法人は経営も存続できません。この見解を是とするならば、訪問看護はすべて公営でやらねばならなくなり、国や県、区市町村の財政は存続不可能です。
「2025年問題が目前に迫る中、より具体的な対応が求められている」とのことですが、具体的な対策は何ら触れておらず、より良い提案は無でした。
ステーション単体では存続が難しい。だからこそ、例えば日本看護協会が進めている、看護小規模多機能型居宅介護、いわゆる看多機を誘致すれば、総体での経営は安定化が図りやすいすいということです。
今の訪問看護ステーションのあり方を考える、だからこその提案であり、単なる赤字存続への問題提起です。
討論の議事録
平成31年3月議会 最終日
(クリックしてください)
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【平成30年12月議会より】
●議案第95号「公の施設の指定管理者の指定」(総合福祉センターなど)
指定管理者制度の本旨は民間活力の活用です。公募が実施され、選定結果として、市長が会長であり、双方代理状態にある飯能市社会福祉協議会が選ばれるのであれば、それは何ら問題ありません。
しかし、非公募の条件に団体の実績評価が良好な場合という、指定管理業務や一般的な委託であっても当然の事象で門戸を閉ざしてしまうのは、比較検討の機会を奪われてしまいます。自治体で指定管理者として努力されている民間企業など、さまざまな法人がこれをクリアできないとしてしまいかねない評価選定理由であり、参入障壁と指摘されかねないものです。
選定において総合的な考慮を市が行うのであれば、公募は行うべきです。公募で市と関連しない社会福祉法人や民間企業との比較評価を経て、結果として社会福祉協議会に決まるのであれば、そこは何ら問題ありません。公募で所定の手続を経て、例えば、安価である、サービス水準が高まるなど、よりよい提案を事業者から得るのが指定管理者制度の前提です。
選定理由については、「地域福祉の根幹を担ってきた団体であり、地域の実情を最もよく知っていること」等は、仕様書に対応を定めればよいと考えます。
各自治体で多々行われている公募は、現状の運営がすぐれているかどうかを客観的にはかれるものです。行政改革、財政健全化を進めるためには、最低限比較は行うべきですが、公募の比較なく、今後毎年およそ8,000万円、総額およそ4億円、5年間でおよそ3,000万円増と、経費削減が進むとの方向性も見えないところです。
税金投入という経費をふやして利用率を上げるのであれば、それは指定管理者制度の趣旨が生かされているとの判断ができないところです。
●議案第96号「公の施設の指定管理者の指定」(美杉台児童館)
指定管理者制度の本旨は民間活力の活用です。公募が実施され、選定結果として、市長が会長であり、双方代理状態にある飯能市社会福祉協議会が選ばれることは、何ら問題ありません。
しかし、非公募の条件に団体の実績評価が良好な場合という、指定管理業務や一般的な委託であっても当然の事象で門戸を閉ざしてしまっては、比較検討の機会すら奪われてしまいます。参入障壁と指摘されかねないものです。公募で所定の手続を経て、例えば、安価である、サービス水準が高まるなど、よりよい提案を事業者から得るのが指定管理者制度の前提です。
選定理由の児童の情操教育、健康増進、子育て支援、地域連携、意見反映などは、埼玉県内のほか自治体でも、株式会社やNPOなど民間が児童館向けでクリアしているものと同様のものです。各自治体で多々行われている公募は、現状の運営がすぐれているかどうかを客観的にはかれるものです。
行政改革、財政健全化を進めるためには、最低限比較は行うべきですが、公募の比較がなく、経費縮減の記載も、今までの毎年およそ1,900万円から純増傾向となり、今後も毎年2,000万円前後、総額およそ1億円と、経費削減が進むようには読み取れないところです。
ほかの児童館と指定管理の期間を合わせるために公募は選択できなかったなど、非公募とする特殊要因がない以上、比較検討を要するものであると考えます。
【賛成側の見解概要】
選定について、いかに他事業者と比べ優れているかの判断がなく、他自治体比較で考えても問題です。
理由には、
「指定管理者としている団体の実績等の評価が良好な場合、
施設の設置目的の達成や飯能市の施策の推進上、管理運営団体が特定される場合、
飯能市出資法人であって、当該法人指定で施設設置目的を効果的かつ効率的に達成できる場合、
地域密着型の施設の場合等
いずれかの事由に該当する場合に非公募にすることができるとあります。」
とのこと。
ここで、まず論点となるのが、非公募にすることが「できる」という表現です。
「できる」のであって、「しなければならない」訳ではないのです。役所と議会で選定したものが、今回も優れているか同じ構成で自己判断してしまっています。
これを回避するには、公募を行い、他の事業者との比較を行うか、もしくは公募に応じる事業者がなく、継続することが必然という状況に至ることが必要です。
「約20年間や、約30年間に及ぶ管理運営実績」
こちらの理由についても、指定管理者制度の適用として問題です。他自治体では継続されてきた市に関連する団体から、選定先を変える、違う判断事例もあることから、理由とはなりません。
「事業評価はオールA」
この理由も、評価の客観性を高めるには、比較対象が必要です。比較対象がなければ、達成しやすい基準でオールAなど、質の高いサービスという基準が適切かも判断できません。
仮に非公募にしないで、公募手続きを経て選定がなされていれば、何ら反対することはないのですが、こうした判断基準のあいまいさが払拭できない以上、非公募で選定されたものは賛成しかねるところです。
●議案第98号「公の施設の指定管理者の指定」(阿須運動公園、美杉台公園、岩沢運動公園)
指定管理者制度の本旨は民間活力の活用です。公募が実施され、現在の事業体が選ばれるのであれば、何ら問題ありません。しかし、非公募の条件に団体の実績評価が良好な場合という、指定管理業務や一般的な委託であっても当然の事象で門戸を閉ざしてしまうのは、比較検討の機会を奪われてしまいます。これは参入障壁と指摘されかねないものです。
運動施設全般については、特に株式会社が強みを発揮している分野であり、大手企業や関連子会社、管理専門会社やスポーツ関連企業など、それぞれ創意工夫にたけています。補助金を受け取る団体の企業体特命指定という指摘を受けないためにも、公募選定によって妥当性を担保するべきです。
例えば、安価である、サービス水準が高まるなど、よりよい提案を事業者から得るのが指定管理者制度の前提です。民間企業を指定する他自治体の評価でも、非公募指定はないため、再指定を得られるように常に最大限工夫し、新規事業の展開などサービス向上に積極的に取り組みつつ、管理コストの縮減といった仕様書等で定められた水準に達しています。
行政改革、財政健全化を進めるには最低限行うべき公募の比較がなく、費用は今まで毎年およそ6,700万円だったものが毎年およそ8,000万円前後、総額およそ4億円と、5,000万円以上高くなります。さらに市民サービス面、利用者数についても、利用件数は上下があるものの、利用者数は純減、1万人単位で減となっており、利用促進も費用縮減も進むように読み取れず、公募での比較検討を要するものであると考えます。
【賛成側の見解概要】
こちらについても、体協と企業との企業体が非公募で指定されております。
「業務の専門性、
施設の性格や設置目的、
政策的な見地」
これらから、非公募としていますが、他の事業者がこれを満たせないかどうかの判断は示されておりません。
屋内外の運動施設は、例えば
サカタのタネグリーンサービス株式会社
西武造園株式会社
横浜緑地株式会社
株式会社日産クリエイティブサービス
等々、民間の実施事業者が見つかります。
多くの事業者が公募に応じられないと判断する理由が、主観ではなく客観的に判断できるためには、やはり公募での募集手続きを要します。
さらに
「選定後1回目の更新、初めての更新でわざわざ外し、再び公募するのでは、参入する団体のモチベーションも下がる、人材育成やノウハウも生かされません。」
ともあります。
指定管理者制度は、公募と選定を経る制度であり、民間でも契約行為には更新があります。毎回公募であっても頑張るのが民間であり、非公募の理由にはなり得ません。これが許されるならば、前回は公募に間に合わなかったが、今回はという事業者を締め出す行為になります。
今の事業者が問題ないならば、なおのこと、公募で妥当性を担保するべきです。公募手続きを今回も経ていれば、賛成しました。
討論の議事録
平成30年12月議会最終日
(クリックしてください)
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議案の賛成・反対については、同じ反対でも論点が全く異なる場合もあります。また、賛成は本当に市民の皆様と市の発展のための賛成であると納得できるか、ぜひ厳しいチェックをお願いします。