【3月議会一般質問全文と答弁概要】
今議会で審議中の議案に「飯能市こども基金条例」案があります。全員協議会でその背景等について報告がありました。
昨年の成年後見制度利用促進基金に続き、市民の方からの貴重なご寄付があり、その使途も明確なご意向があったということで、新たな「子ども基金」の創設となったとのことです。
質疑もさせていただきましたが、その運用については、「ふるさと納税からの繰り入れも想定している」、子ども基金という名称もそうですが、「福祉関係のみならず、教育など部局を横断した活用事業の拡大を検討する」と、明確にご答弁をいただきました。
今回のテーマであるふるさと納税の活用につきましては、過去に何度も取り上げ、特に多面的活用と基金の見直し、使途拡大について提案を続けてまいりました。
ここで、新たな基金が創設されることによりまして、ふるさと納税の更なる活用も可能性が広がります。
ふるさと納税は、首都圏一極集中による税収格差の解消を目的にできた制度です。地方の自治体が、創意工夫で得ることができる貴重な自主財源。
制度が出来た当初は、どの自治体もまさに手探りでしたが、次第に浸透して、高額な寄付をえる自治体が出てくると、今度は、改悪ともいえる度重なる規制の強化があり、特に地場産品規制による二極化(北海道と九州の一人勝ち)に苦慮しながら、各自治体が切磋琢磨してきました。
その成果として令和4年度ふるさと納税額が全国で9600億円に。
総務省は市場規模を2兆6千億円と試算。未だ半分以下。まだまだ可能性があります。
後の項目でも質問しますが、飯能市の発展や課題解決のために、実施したい施策は、山積しています。その政策提案において、ふるさと納税はぜひ活用したい財源です。
財源のあてのない提案や要望は、非現実的です。
財源の課題があって実現できていない課題があるのに、国に準じて定期的に出される自分たち議員や市長副市長教育長の給与報酬アップには賛成するような、そのようなことは、私は政治信条として出来ません。
そこでふるさと納税を財源としてできる施策の提案をしたいところですが、これも課題がありました。
ふるさと納税の大部分がムーミン基金への寄附となるわけですが、ムーミン基金条例の不明瞭な制約によって極端に使途が限られている。ムーミンメッツァに関連した観光施策にしか処分できない。
ムーミンをメインに打ち出した観光を中心とする施策も、否定されるものではなく、当然効果はありました。
ですが、このまま条例の制約を受け続けることは、その他喫緊の課題解決に向き合う機会を損失します。
基金の在り方の見直しや使途の拡大を7年間、一貫して指摘、提案してまいりました。
議員一人がいくら一般質問しても変わらないよ、と言われまして、その通りですが、今年度は違います。
常任委員会の所管事務調査として、ふるさと納税の活用をテーマに、調査して、担当部署との意見交換や県外視察にも行きまして、政策提言にまとめ、先月市長に提出しました。6人の委員全員が真剣に議論、協議してまとめた強い思いのこもった内容です。
この度、新しい基金が創設されること、ふるさと納税からの繰り入れを想定していると明確に示されたことは、いよいよムーミン基金条例の制約から離れた新たな活用が可能となるその一歩であると、大変に期待をしました。
大きな期待を抱いて常任委員会審査に臨みまして、現状、雲行きの怪しさを感じておりますが、新たな一歩の可能性があるということを前提にお伺いしてまいります。
1.ガバメントクラウドファンディングについて
(1)クラウドファンディングの検討
ふるさと納税制度は、返礼品の魅力という要素はまだまだ大きいですが、クラウドファンディング型ふるさと納税は、特定の目的を示して自治体がクラウドファンディングを行い、事業等に活用します。
返礼品はある場合もない場合もありますが、寄附金控除が適用される仕組みとして広がっています。
支援金の使い道という点で選択されるため、何に使われるのかが明確で、寄附者の想いが込められ、自治体と寄附者の継続的な繋がりを維持することにも寄与するとされています。
これまでもクラウドファンディングの検討については、議会で発言してきましたが、前回12月議会の一般質問の答弁でも、担当部署で既に検討を重ねてきているという答弁でした。
そこでおうかがいします。
ふるさと納税制度を用いたガバメントクラウドファンディングについての、現時点での取り組みと活用の検討状況をお伺いいたします。
答弁概要
ガバメントクラウドファンディングは、自主性・自立性の高い財源の確保策として検討すべきものとして捉えております。
目標額が達成しなかった場合においても、事業を実施するのかといったことも大きなポイントであることから、事業の必要性自体も十分考慮し、予算とリンクさせていく必要があると考えております。
本市では、毎年度、総合振興計画実施計画の策定にあたり、全部署にヒアリングを実施しております。ヒアリングでは、事業の内容や必要性、財源の有無や確保の可能性などについて実施しており、その中でクラウドファンディングの趣旨に見合う事業があるか、事業実施のスケジュールに問題が生じないかなどの点も含めたヒアリングも考えたいと思います。
毎年度、総合振興計画の実施計画策定について、全部署にヒアリングをしている。その中でガバメントクラウドファンディングについてもヒアリングすることを考える、ということですよね。
前回12月時点で、検討を重ねてきているとご答弁で、新たな基金も創設されて、いよいよ新たな取り組みや次の展開の準備が進んでいるのではと期待していたわけですが、現状ではまだどんな事業がいいのか、リスクはなにかといったヒアリング段階ということで、特に、事業の選定や取組みについての、実行に移すための検討は進んでいないものと理解しました。
その前提でご提案をします。
(2)総務省の支援策
総務省では、平成29年より、クラウドファンディング型のふるさと納税に取り組む地方団体を後押しするため、起業家支援、移住交流促進をテーマとした支援策を実施しています。
これは以前にも提案しました。
二つのコースがあり、ふるさと起業家支援プロジェクトは、地域経済の好循環の拡大が図られるよう、地方団体がクラウドファンディング型のふるさと納税を活用し、起業家に対して資金提供を行うものです。
もうひとつは、ふるさと移住交流促進プロジェクトであり、ふるさと納税をきっかけとした継続的なつながりを持つ取組を通じて、将来的な移住・定住につなげます。
総務省は、起業家の事業立ち上げの初期投資に要する経費について、地方団体がふるさと納税を財源に補助する金額を超えない範囲で行う補助等を行う場合に特別交付税措置を講じています。
飯能市では、以前より国県の支援も受け、移住や起業の支援を行っています。今議会開会の市長挨拶で、人口減少が増に転じたというお話もあったところ。
飯能市の移住定住施策はメディアからも注目を集めています。
ここでさらに、総務省の支援策を用いれば、交付税措置もされつつ、ふるさと納税の活用ができます。
総務省のふるさと納税支援策、起業家支援と移住交流促進について検討はされましたでしょうか。交付税措置という財政支援が得られるため、飯能市が進めている起業移住支援強化の点からしない理由はないと考えます。ご所見をお伺いいたします。
答弁概要
本市では、今まで国の交付金の活用を中心に進めてまいりましたが、より優遇措置のある制度がある場合には、厳しい財政状況のもとその活用や併用などを検討していく必要がございます。
「ふるさと起業家支援プロジェクト」に、埼玉県内では北本市が活用するなどしており、商店街での新たな事業化支援などに取り組んでいる事例がございます。
先進自治体での事例などを調査、研究してまいります。
先進自治体の事例を調査研究とのご答弁ですが、移住定住施策については、飯能市は先進自治体です。
移住定住について補助金を出すための予算を計上しても、利用がない時代もあった。それがコロナ禍でリモートワークが進み、人々の価値観や働き方が変化して、国の規制緩和もあって、今では大変な問い合わせの数で、補助金が足りなくなって補正を組んだこともあるくらい、移住先として飯能は人気、飯能市の移住定住施策はまさに先見の明があったと、更なる推進をと、これまでも委員会等で発言をしてきました。
人口が増えて、新たな仕事が生まれて好循環を生み出す。その支援策の土台があるのであれば、 交付税措置もあるし、まずは総務省の支援策から始めてみてはいかがですかという、提案なんですが、それも調査研究ということですと、そもそもになってしまいますが、市長、飯能市をこんな街にしたい、こんな街づくりをしたいという強い思いが当然おありだと思いますが、その財源として活用するためにも、ガバメントクラウドファンディングをやろうというお考えはあるのかないのか、いかがなのでしょうか。
市長答弁
本市にとって有利な選択を行うことが重要。
(3)ポータルサイトの活用
ガバメントクラウドファンディングもまた、ふるさと納税全般、ポータルサイトの利用が中心です。
老舗ポータルサイトでは100件以上のプロジェクトが進行中で、以前も紹介しました広島県神石高原町は3億円近い寄付額、その他にも寄付額が数百万から数千万円に上るプロジェクトも多々見られます。
別の大手通販サイトのポータルサイトでは、稼働プロジェクトが7千万円から9億円と、多額の支援が得られています。
また、埼玉県内の自治体では、本件調査時点で新座市、草加市、越谷市、さいたま市、戸田市、熊谷市が実施、達成しているのは草加市でした。草加市は児童書を充実したいということで、131万円を集めています。
全国的にみると、子どもの宅食、いじめ対策、進学費用など子どもに関する支援、環境問題の対応、移住定住促進、動物殺処分ゼロ、犬猫去勢避妊手術支援が既に達成していました。
多く見られるポータルサイトのプロジェクトを参考に、飯能市でも課題であって、財源の手当がなく着手できていないもの、それをテーマとして検討して、まずは実施してはいかがでしょうか。ご所見をお伺いします。
答弁概要
ガバメントクラウドファンディングを実施、募集を開始するに当たっては、より効果的に募集できるよう、専用ポータルサイトの活用は不可欠と考えております。
ガバメント・クラウドファンディングは、自治体が抱える問題解決のため、ふるさと納税の寄付金の「使い道」をより具体的にプロジェクト化し、そのプロジェクトに共感した方から寄付を募る仕組みであることから、寄付者の皆様に共感をいただく事業、応援いただきたい事業を、分かりやすく発信していく必要がございます。
本市では、毎年度、総合振興計画実施計画の策定にあたり、全部署にヒアリングを実施しておりますので、クラウドファンディングの趣旨に見合う事業があるか、事業実施のスケジュールに問題が生じないかなどの点も含めたヒアリングも考えたいと思います。
ポータルサイトにあるテーマから市でも必要なプロジェクトを選んでみるのも方法かとご提案しましたが、総合振興計画実施計画の策定にあわせたヒアリングを考えるとのことでした。
(4)広域連携のクラウドファンディング
ポータルサイトの中で、ふるさとチョイスでは、広域連携のガバメントクラウドファンディングを企画し、全国の自治体が共通して抱える課題に対し、複数自治体が連携してふるさと納税を募る仕組みが設けられています。地域課題への取り組みから日本が抱える大きな課題にも向かうことができるということです。
起業家応援が29自治体で2億5千万円、殺処分ゼロが87自治体で34億6千万円、子ども支援が37自治体で11億3千万円、災害復興が24自治体5億4千万円、他にも様々な項目があり、花粉症対策、スポーツ支援、帰省困難学生などがあります。
ガバメントクラウドファンディングでは、特に関心の高い取り組みが広域連携としてピックアップされています。こうした分野から、手始めに取り組んでいくことも、導入としてはよいと考えます。ご所見をお伺いします。
答弁概要
当該仕組みは、共通テーマで1つの「プロジェクト」のカテゴリーをつくり、入口を一つにして総括的にPRしていくものであり、寄附については事業を選択するものです。
そのため、まずは魅力ある事業をつくりあげることが重要であると考えます。しかし、共通した課題に興味を持っている方々に情報が届きやすくし、共感を生むことにつながっていくことから、同時に考えていくべきものと捉えています。
魅力ある事業を作ることが先か、どんなテーマが興味を持ってもらえるか、ヒアリング、検討、将さ研究と、かなり慎重なご答弁が多かったように感じます。
今、日本の寄附文化は大きく変わって来ていて、クラウドファンディングは応援したいとか、何か出来ることをしたいと思った時に、一番手軽にできる寄附になってきていると思います。
維新の身を切る改革は、毎月自身の報酬から一定額を法令順守で寄付します。
飯能市の場合は、議員報酬月額38万が基本で、党の計算式で月約3万円弱、年間30数万円ほどを私も寄付しています。
その寄付先に私は、北海道の馬事産業が盛んな町が馬を核とした街づくりのプロジェクトとして、乗馬クラブなどで働いて頑張った馬がのんびりと余生を過ごす終の棲家を作ろうという、官民連携のガバメントクラウドファンディングを選んで寄付しています。
私事ですが趣味で乗馬をやっていまして、クラブの馬がほとんどサラブレッドで、元競走馬です。そこで知ったことが、競走馬を引退した馬のほとんどは行方不明。引退後の行方を追うということは業界のタブー。行方不明です。
これは簡単に議論できる問題ではなく、中央競馬の馬券売り上げの10%が国庫に納付されており、1割でも令和3年度は3500億円、一般会計に繰り入れられているので、大きな財源です。
競馬という巨大産業で引退馬について、私ができることは何もない、でも出来ることは何かないのかと思ったところで、乗馬クラブの掲示板で、クラブにいた馬が北海道に移住しました、ふるさと納税で応援して下さいという貼り紙をたまたま見まして、このプロジェクトを知りました。
寄附をしていると、気になってサイトをたまに見に行くんですが、移住して半年くらいで亡くなる子もいて、あぁほんとにがんばってきたんだな、最後はこんな大自然の中で静かに過ごせてよかったな、このプロジェクトは続けて欲しいなという気持ちになって、微々たるものだけれど寄附を続けようと思います。
引退馬の応援ですが、Googleの検索ワードのデータでは、1ヶ月に検索されるワードで
競馬関連が350万件、乗馬が2万件、引退馬は4000件です。
ほとんどの人は引退馬の多くが天寿を全う出来てないことに特に関心はないという数字なんですが、それでも、このプロジェクトは昨日見たところで2000人以上の人が寄付していて、3800万ほど集まっていました。
なので、みんなに共感してもらえるテーマや事業は何か、だけが答えではないと思います。
返礼品勝負のふるさと納税が大企業の圧勝で資本勝負だとしたら、クラウドファンディングはベンチャーの発想です。
万人に共感は得られなくても、圧倒的に好きだ!応援したい!と思っていただける一部の層に刺さるようなプロジェクトは逆に強いと思います。それでいつか絶対飯能に行ってみたいと思って下さる方が全国にいれば、それは素敵なことだと思いますし、応援される飯能だと思います。
ぜひガバメントクラウドファンディングの実施に至りますことを期待します。
2,企業版ふるさと納税について
(1)寄附を受ける現行体制
企業版ふるさと納税は、平成28年4月より制度が開始されました。本社などの主たる事務所がある自治体以外が対象となり、不交付団体など一部の制度対象外を除き、累計1,361の自治体が地方創生応援税制の対象事業に認定されています。
自治体は企業とのパートナーシップの構築、地方創生に効果の高い事業の企画・実施を進め、企業は通常の納税によらず、人材育成、自然環境保護、地域の活性化等の事業に貢献し、自治体との新たな関係構築などを目的としています。
企業の社会的責任や、SDGsに取り組み、社会課題の解決を通じ、企業ブランディングに貢献し、自社ビジネスの市場開拓として、社会課題解決型の新事業開発も企図しているそうです。
内閣府によると、令和四年度の全国の寄付額は341億円、寄付件数は8390件。
全国の寄付額1位は、静岡県裾野市がウーブン・シティ関連企業から15億4600万円、2位はロケット打ち上げ拠点のある北海道大樹(たいき)町14億600万円です。寄附受入額が多い地方公共団体のトップ10は寄付額の合計が6億円を超えています。
飯能市もスタートしておりまして、令和4年度に飯能市が受けた寄附は、7件1305万円、市への直接は3件185万円、勧奨委託したものが4件、1120万円ということでした。
12月議会で、委託業者がパンフレットを送付するだけでなく、少なくとも市と関係性の深い、共に地方創生まちづくり地元経済の発展に尽くされる企業へは、市長のリーダーシップで直接お願いをするべきではないですか、とお伺いしました。
市長からは、「私自身が強いリーダーシップを発揮し、ふるさとう納税への積極的な推進、納税額の確保に取組んでいく」というまさに力強い答弁がありました。
現在は、市独自での寄附勧誘、外部委託での勧奨、手法についてどのように区分けして実施しているのでしょうか。またより多く寄附を受けるための工夫と成果をお伺いします。
答弁概要
本市では大きく寄附を募りたいとの考えから、全国の自治体の先進事例を参考に、「成功報酬型勧奨委託」を取り入れて実施しており、市独自の寄附勧誘は実施しておりません。
工夫につきましては、本市の地域再生計画の内容(使い道の内容)をわかりやすく表現したチラシの作成や、直接市に連絡がある場合などは丁寧な説明を心掛け、寄附を検討している企業の希望に添えるよう努めているところでございます。
なぜ、市独自の寄附勧誘はしないのでしょうか。
市長は「強いリーダーシップを発揮し、ふるさと納税の積極的な推進、納税額の確保に取組む」とおっしゃっているわけで、現に飯能市と関係のある企業からの寄附にも手数料をとられている状況について、トップセールスでより寄附額を増やして、企業との強固な連携を深めて、さらに発展させようとはお考えになられませんでしょうか?
市長答弁
市の発展には、私自身が強いリーダーシップを発揮する所存。
提案を続けます。
(2)県事業を用いた認知度向上
埼玉県でも、市町村企業版ふるさと納税支援事業を進めています。市町村向けの研修会、企業と自治体の寄附事業のPRを行うマッチング交流会、SDGs及びESGの視点で寄附企業を紹介する報告書の作成などです。
埼玉県作成の企業版ふるさと納税寄附募集事業の案内をみると、47ページほど、各自治体が紹介されているのですが、飯能市の記載がありません。
現状は、県ホームページに計画名:森林文化都市はんのう 賑わい活力創造プロジェクト、事業名:森林文化都市はんのう 賑わい活力創造事業の紹介がされており、企業の、SDGs及びESGの視点に合致しているとはいいがたい印象です。
昨年6月に埼玉県は内閣府企業版ふるさと納税マッチング・アドバイザーの派遣をうけ、研修会をオンラインで行い、地方公共団体の訴求内容や手法、企業の地方公共団体への提案内容等について助言があったそうです。
埼玉県が行う研修会や交流会について、参考として活用したものはあるのでしょうか。機会をとらえてプロモーションを強化していく点からも、活用は有効と考えます。ご所見を伺います。
答弁概要
企業版ふるさと納税につきましては、昨年、埼玉県で開催されたオンライン研修会ではなく、内閣府が開催した研修会に何度か参加しております。そちらでは他の自治体の先進事例の発表などで紹介された内容を参考とし、委託業者の選定などをおこないました。
また、埼玉県では、今年度から「市町村企業版ふるさと納税支援事業」を進められており、「住むなら、埼玉。」のサイトに本市の寄附事業紹介(寄附受付中の事業)も掲載していただいております。
今後は、内閣府の研修会と共に、県事業の募集事業案内(県内寄附受入事業)の掲載も併せて検討し、研修会や企業とのマッチング会など、他自治体の実績を参考に積極的に本市をプロモーションしてまいりたいと考えております。
プロモーションの強化はぜひよろしくお願いいたします。
(3)自治体事例の探求
先ほどご紹介しました埼玉県の募集事業内に、企業版ふるさと納税令和4年度寄附実績一覧があります。
その中で、飯能は上位です。飯能よりも寄付金を集めているのは、熊谷市、深谷市、越谷市、横瀬町で、自治体の規模に関係なく、支援を得ているようです。
先の内閣府が公表した実績によれば、寄附を実施する企業数が毎年1,500程度増え、より活用が期待される中、民間サービスのさらなる活用や官民連携事業の参画など、首長の営業力や意思決定、部署を横断した推進体制などの特徴があるそうです。全国の自治体の実績は、内閣府にて公表されており、参考になります。
また、大臣表彰も1月に公表されましたが、表彰された5つの自治体、企業3社の取り組みは、事業概要や取組概要を読みますと、単発の寄附ではなく、持続可能性や課題解決につながるもので、ストーリーとして明確な流れがありました。
これらの実績を参考に、民間サービスのさらなる活用や官民連携事業、営業力強化や全庁横断の寄附獲得体制の構築などの工夫を凝らすことが成果につながると考えますが、ご所見をお伺いします。
答弁概要
令和4年度の本市の実績は、県下5位の実績となり寄附企業数7件、合計13,050,000円の寄附をいただきました。更に上を目指し、これまでも他自治体の実績を参考とさせていただいておりますが、今後も研修会などに積極的に参加し、民間サービスの更なる活用を含め研究していきたいと考えております。
また、全庁的な寄附獲得体制の構築として、事業担当課へヒアリングシートを作成していただき、企業版ふるさと納税の認知及びスムーズな寄附受入ができるよう工夫しているところです。今後も継続的に事業担当課の協力を得ながら、寄附獲得体制を構築していきたいと考えております。
上位自治体として参考にされる側になれるよう、ぜひ体制の構築をお願いします。
(4)内閣府の支援制度
内閣府は、地方公共団体が実施するSDGs関連事業において企業版ふるさと納税を活用し、企業と地方公共団体がwin-winの関係を構築するために必要な取組について検討するとして、地方創生SDGs官民連携プラットフォーム、企業版ふるさと納税分科会を継続して開いており、先月末にもオンライン開催がありました。
SDGs関連事業に取り組む企業が企業版ふるさと納税を活用するメリットの周知と、SDGs関連事業を通じた地方公共団体と企業とのマッチングの機会の創出を行うもので、連携の促進が図られています。
分科会の開催テーマを把握し、参加することで企業との連携が強化できると考えます。内閣府の支援事業の活用状況について、お伺いします。
答弁概要
これまでも、内閣府が主催する研修会には積極的に参加しているところです。先日も2月29日内閣府主催の「企業と地方公共団体とのマッチング会」へ本市も担当が視聴参加いたしました。地方公共団体のプレゼンテーションにより全国に向けて魅力を発信され、そのまちの魅力や事業に興味関心を持った企業とのコミニュケーションタイムを過ごすものでした。
このような分科会での企業とのマッチングにつきましては、寄附金の充当先である事業担当課の協力を得ながら、多くの企業に対するアプローチの方法をより探求し、取り組みを強化していきたいと考えております。
内閣府がSDGs関連事業での官民連携を後押ししている。
この流れはきちんと把握していく必要があります。
(5)地域再生計画の変更認定
これはある意味企業版ふるさと納税の肝となってくるところですので、しっかりうかがいます。
内閣府の地方再生のホームページには、企業版ふるさと納税に係る地域再生計画の変更認定を受けた団体一覧が多数掲載されています。この変更申請は毎年度5月、9月、1月を目途とされており、適宜修正が行われています。
飯能市地方人口ビジョン・飯能市まち・ひと・しごと創生総合戦略で、飯能市が認定を受けた地域再生計画には、水と緑の回廊づくりプロジェクト、水と緑の回廊づくり拡充プロジェクト、賑わい活力創造プロジェクト、水と緑の回廊強化プロジェクトがそれぞれ計画として定められ、支援措置を受けています。
飯能市の地域再生計画は特色として、観光がベースであり、それ自体は否定されるものではなく、地方財政措置を伴う補助金や交付金のうち、地方負担分に地方創生応援税制に係る寄附を充てることができる補助金・交付金として認められます。
しかしながら、これを企業版ふるさと納税制度で考えると、企業のSDGs、ESG及びCSRの観点と、観光というのは経済的観点が強く、道路整備が列挙されている点も含め、サステナブルな方向に企業が向きにくいと思われます。
例えば、寄附の多かった熊谷市では、観光の地域再生計画は既に期間を終えており、子育てをメインにした地域再生計画が現在動いています。企業版ふるさと納税を行う企業にとって、寄附を利害関係者へ説明しやすい計画となっています。深谷市では、SDGsの記載を含んでいます。
地方版総合戦略に位置付けられた、雇用の創出や、移住・定住の促進、結婚・出産・子育ての支援、まちづくり等、地方創生を推進することが企業の寄附方針とリンクしています。
内閣府では認定手続きの見直しも進めており、個別の事業ごとの認定から包括的な認定とし、地域再生計画の記載事項を簡素化しており、 地方版総合戦略の抜粋・転記による地域再生計画の申請・認定が可能となりました。
併用可能な国の補助金・交付金の範囲の拡大も進んでおり、企業版ふるさと納税と併用する場合に、優先採択などのインセンティブを付与しています。
現行の森林文化都市はんのう 賑わい活力創造プロジェクトは、企業が企業版ふるさと納税を検討しやすい項目とはなっていないため、内閣府の期限に合わせて、地域再生計画の追加や変更認定を検討してはいかがでしょうか、ご所見をお伺いします。
答弁概要
企業版ふるさと納税を活用するためには、地域再生計画を策定し、国の認定を得る必要があり、現・地域再生計画「森林文化都市はんのう 賑わい活力創造プラン」は、令和6年度末までを期間とした計画でございます。
現行の企業版ふるさと納税制度は、令和7年3月31日までであり、令和7年度以降の制度延長は未確定ですが、内閣府では令和7年度税制改正要望に向けた活用状況調査を企業等に行うなど、制度延長に向けて動いていると認識しております。
そのため、令和7年度以降も企業版ふるさと納税を活用するためには、次期地域再生計画を令和6年度中に策定、認定を受ける必要がございます。
次期地域再生計画の策定においては、切れ目のない子育て支援、特色ある教育や災害に強いまちづくりなどの視点は将来のまちづくりという視点においても重要なポイントであると考えております。
企業版ふるさと納税を呼び込むという視点を忘れず、企業に訴求できるような計画にしてまいりたいと考えております。
ここは今後のカギとなる重要なところで、令和6年度中に策定、認定をうけるということですから、企業のSDGs、検討しやすい視点からの計画を期待します。
ふるさとう納税をどうやって得ていくかというテーマはここまでとしまして、最後にその活用の提案、教育バウチャー、塾や習い事クーポンについておうかがいします。
教育バウチャーについて
(1)官民連携による教育格差の解消
家庭環境による教育格差は、報道でも頻繁に取り上げられ、飯能市内の状況についても、以前より発言してきました。
日本では、家庭が負担する子どもの学習費のうち、学習塾や習い事などの「学校外活動費」が約7割を占めるそうです。親の経済格差が教育格差に直結しやすい要因です。
学校内においては、先生方が授業のやり方などで格差がでないよう尽力されて、教育DXなど様々な施策も進んではいますが、学校外の教育費に格差があるのがこの国の現状です。
親の経済力で、進路の選択肢や将来が決まるという格差を是正するには、教育機会の格差解消、特に子どもたちの放課後における教育活動の支援が重要となります。
本来、教育の無償化は国の責任です。現状の高校進学率は99%、大学で54%。高校の無償化については、私立高校も含め、東京都でも所得制限の撤廃など進んで来てはいます。それでもこれも自治体の財政力で格差のある状態。
無償化に必要な試算として、高校を完全に無償するには6600億程かかるとされています。国の医療費が44兆円、10兆円の補正が組まれる国の予算では、0.6兆円は本気になれば必ずできます。
そこで自治体で出来ること、飯能の子どもたちに今できることとして、塾・習い事を補助する、クーポン事業があります。
公益社団法人チャンスフォーチルドレンでは、スタディクーポン事業を行っており、自治体の子どもの貧困対策や子育て支援政策に寄与しています。
寄付金を原資としてCFCがスマートフォンで使える電子上の「スタディクーポン」を発行する。
経済的に困難な状況にある子どもがクーポン利用を申請、自分が行きたい教育サービスを利用できるというものです。
利用先はCFCに登録をした教育事業者で、学習塾や家庭教師、キャンプや野外活動、スポーツ、文化活動、特別支援サービス、フリースクール、オンライン通信教育など多岐にわたります。教育事業者側はクーポン利用の対価をCFCに対して請求し代金を得ます。
これは、医療や介護保険分野のサービスとほぼ同じ仕組みです。
利用する権利を持つユーザーが、自分で病院や事業所を選んでサービスを利用する。事業者には診療報酬や介護報酬といった形で対価が支払われ、そこに補助金が当てられる。
その教育版です。
CFCでは、企業・NPO・行政とコンソーシアムを組んでスタディクーポン・イニシアティブを結成し、学習支援事業に組み込まれました。
渋谷区が第一弾で、千葉市など利用団体も増えており、賛同教育事業者として学習塾や家庭教師・通信教育、教育支援団体も対応しています。
制度の利用者の満足度は高く、平均学習時間は全国平均以下だったものが、全国平均を上回り、学習環境の質も向上した結果、進路も全員が進学でき、初期の目的を達成したとのことです。
基礎自治体でもこの仕組みを使う事例があり、就学援助では不足する部分について、支援する制度を検討してはいかがでしょうか、ご所見をお伺いします。
答弁概要
家庭の境遇や経済状況にかかわらず、誰もが安心して教育を受けることのできる環境を整えることは大変重要であると認識しております。
放課後の多様な学びについては、家庭の経済状況により、学習塾や家庭教師、通信教育など、教育を受ける際の費用負担の大きさは、深刻なものとなることが予想され、教育機会の格差に直結する場合があると考えています。また、子どもたちの教育の格差が進学等にも影響する可能性もございます。
放課後の学びをサポートするスタディクーポン事業のようなものを自治体で取り組むことは、教育格差の解消に向けて一つの方策であると捉えています。家庭環境や経済状況に左右されず、全ての子どもたちにとって、平等な教育機会を保障されることは、社会的な公正としても必要不可欠です。
しかし、導入にあたっては慎重な検討が必要と考えています。各地域で行われている取り組みの効果はどの程度あるのかを検証する必要がございます。また、利用できる施設や企業といった相手先の選定や周知、さらには、誰がどのように負担するかが大きな問題となります。公費負担と私費負担との関係については、十分な検討が必要だと感じております。
自治体のスタディクーポン事業導入は確かに慎重である必要があります。継続的な支援が前提ですし、利用先や送迎手段などの課題も多いと聞きます。
検討の際にはぜひ教育部局から、子どもの立場での検討をお願いします。今回、ご答弁を教育部にお願いしてありましたが、子育て家庭、と親への経済的補助という視点が入ると、絶対に議論が進みません。「塾や習い事に税金を投入するのはぜいたく」といった声が必ず出ます。
子どもたちの学ぶ機会の権利をいかに公平に担保していくかという議論を、ぜひ部局横断で進めていただきたいと願います。
(2)企業版ふるさと納税による教育再生
世田谷区では、かなり以前より、教育支援が独自に行われており、最近は財政面での持続可能性を確保するため、子育て支援のための寄附や子ども基金を設定しています。
この寄附には、同自治体が地方交付税不交付団体であるため、企業版ふるさと納税はなく、個人のふるさと納税をベースにしています。
飯能市は、今後さらに企業版ふるさと納税の活用を進める段階にあります。地域再生計画に教育バウチャーによる幅広い教育支援を盛り込み、企業の社会貢献に関する参画を募るような姿勢が、寄附の増加につながり、教育格差の解消につながっていくというストーリーが考えられます。
事例は今や多数あり、茨城県つくばみらい市で、子どもみらい基金を創設し、地域再生計画に子育て環境の充実(教育・保育,子育て支援サービス等)の経済的支援を進め、令和四年度企業版ふるさと納税が5900万円。
同じ茨城県では教育を地域再生計画に含めている自治体が寄附の獲得に成功しており、境町が3億円、稲敷市やひたちなか市が1億円、常総市と水戸市が5千万円。
飯能市には、期間中の3つの地域再生計画において、理念的な教育の記載に留まることは先ほども申し上げたところです。
教育バウチャーといった教育への支援を強化するため、子ども基金の活用、企業版ふるさと納税を視野に入れた地域再生計画への具体的な学習に関する取組みの記載が必要と考えます。ご所見をお伺いします。
答弁概要
地域再生計画の次期計画を令和6年度中に策定し、認定を受けることになります。
教育や子育てという視点は、将来のまちづくりを考える重要なポイントであり、計画にとって欠かせないものと捉えております。
企業版ふるさと納税を獲得していくため、企業に訴求できる計画づくりに取り組んでまいります。
子ども基金については、これからふるさと納税の繰り入れによる活用が実施されていくことと思いますので、ぜひ早急に進めていただき、地域再生計画の見直しにつきましては、令和6年度中に策定ということですので、ぜひ教育、子ども達への学びを応援する取組みの記載を入れていただくようお願いします。
傍聴にいらして下さった方から、名栗にできたドーナツ屋さんの差し入れをいただきました。
今回も多くの皆さまに傍聴いただき、ありがとうございました。